もう少し知りたい統合失調症の薬と脳 第2版 (こころの科学叢書) 新品価格 |
出版年が少し古い(初版2008年)こともあり、あまり期待しないで読み始めましたが、今まで読んだ本には書いてないことが書いてあったので、予想外に興味深く読みました。
統合失調症では前シナプス細胞からのドーパミン放出が亢進しているとされている。このようにドーパミン細胞の活動が一過性に更新すると、これから何かか起こるという予測を過剰に感じたり、実際起こったことを予測とは異なった意外なことと感じる程度が強まると推測できる(p13)
息子が以前、周りの人が何かを演じているように見るとか、予想と異なる動作をしているように感じる。と言っていましたが、その時の脳の動きはこんな感じだったのかなと思いました。
また、統合失調症の症状の一つに「させられ感」というのがあります。息子が発症した時も「何者かに操られている」と言っていたそうです。(陽性症状の一番ひどい時は措置入院していて私たち家族は直接会っていないのでその様子は見ていないのですが。)
その「させられ感」が生じるしくみについての推察もなるほど、と思えました。
(通常は)人間が行う行動や思考について、それが自分のものだという感覚がある。…またそうした行動や思考について自分が行っているという感覚を伴う。…この能動性の意識はどのように成り立つのだろうか?…たとえば歩くときには足の裏が地面を踏む感覚が生じるし、脚を前後に動かすのに伴って関節や筋肉の感覚が生じてくる。…こうした行動に伴う感覚は、実際に行動してから感じるだけではない。行動する前の時点から「たぶんこんな感覚が生じるはずだ」という予測が頭のなかにあって、それを実際に生じる感覚と照合している。…その照合がぴったりしたときに「自分で歩いている」という感覚が生じてくる。…照合の結果が一致しないと、その感覚が損なわれる。(その結果)何者かにさせられたと感じてしまうことが起こる。(p148~)
これらの「予測」というキーワードから中井 久夫氏の「S親和者」が思い起こされました。
中井氏『分裂病と人類』はまだ読んでおらず『100分 de 名著 中井久夫スペシャル』でダイジェストと読んだだけなのですが、「分裂病親和者(S親和者)は微細な兆候を読む能力」があり、「兆しを読むに当たり、往々にして過剰なほど「先取り」的な反応を起こす」とある通り、統合失調症(分裂病)は、脳の予測や先読みといった働きと深く関連しているのだなと思いました。
新品価格 |